2003年、“Grunge for Luxury”をコンセプトにデザイナー古谷完によって設立される。以後、グランジロックスタイルを基調としながら、ストリート、モード、ワークなど、様々なスタイルを融合したデザインワークで国内シーンを牽引。ミュージシャンやタレントにも多くの愛好家を持つ。
ALL ITEM
金子ノブアキとの2 シーズン目となるコラボレーション発表
暗闇の中に舞い踊るのは無数のカラス
今夏、glamb と金子ノブアキがフォーカスするのは「東京」
歴史と流行、そして多様性が交差する東京を描いたスタイルを
映像作家、写真家・柿本ケンサクが撮り下ろしたビジュアルと共に公開
Photo: Kensaku Kakimoto / Hair&Make: Go Takakusagi / Styling: glamb
PRODUCT
GB0220/NK01 CROW SHIRTS
22,000yen + (tax)
暗闇に舞い踊るカラスとネオン東京の風景を1枚のシャツに描写
glamb と金子ノブアキによるコラボレーションの2 シーズン目の今夏、金子ノブアキの考える東京の姿を落とし込んだシャツがCrow shirts〈クロウシャツ〉。暗闇を思わせるブラックのボディに描かれたのは総柄使いとなった無数のカラスの姿。バックスタイルではボウリングシャツの仕様でマチを設けながら、切り替えによって赤のパイピングを配し、鳥居にもネオンにも見えるシンボリックなラインを描きました。シルエットはドロップショルダーで身幅にゆとりを持たせたビッグサイズ仕様。テキスタイルには落ち感あるエステルレーヨン生地を用い、ルードで色気ある佇まいの一枚へと仕上げました。
“僕は気に入った服はぶっ壊れるまで着続ける性質。いろいろな洋服を着てきたけれど、私生活で着たい服は家の中で埋まっていかず手に取りやすいところにあり続ける服です。このシャツはデザインだけでなく、着心地についても僕が目指す仕上がりになりました。ぜひ実物に袖を通してみて欲しいなと思う1枚です。――金子ノブアキ”
GB0220/NK02 F.R. TANK TOP
7,000yen + (tax)
首元でメッセージを語るロゴタンクトップ
2020 年に4 回にわたる展開が発表されているglamb と金子ノブアキとのコラボレーションライン。2020 年春のアイテムから続くキーメッセージをアクセントしてあしらったのがF.R. tank top〈エフアールタンクトップ〉。ロングシルエットのボディはスタイリングにレイヤードを生み出すよう後ろ身頃を長めに設けデザイン的なスタイルに。その首元のリブにロゴを刺繍で施しました。テキスタイルには伸縮性に溢れて快適な着用感を持ったスパンテレコを使用。コラボレーションのメッセージをデイリーにまとうことのできる1 枚となりました。
“タンクトップは消費が早いものだけれど、その首元は重ね着をしても外から見える場所。だからそこに言葉を乗せることでグルーヴが生まれるのではないかとglambとデザインを進めました。季節を通して着て欲しいと思います。ヴィジュアルのように浴衣のインナーにしてみるのもおもしろいですね。――金子ノブアキ”
GB0220/NK03 F.R. SPORTS SLACKS
21,000yen + (tax)
ドレスとリラックスの同居するTOKYOスラックス
素材使いとデザインの両面に金子ノブアキのスタイルを投影したF.R.sports slacks〈エフアールスポーツスラックス〉。テキスタイルには滑らかな落ち感を持ったレーヨン混のストレッチ素材を使用。スーツにも用いられる生地を用いながら、内腿にマチを設けて運動性を高めたスポーツスタイルのテーパードシルエットを仕立て上げ、ドレスとリラックスが同居する佇まいに仕立てました。また後ろ裾にはレングスの上下などアレンジを加えられるようベルクロ留めのベルトをプラス。そこへメッセージロゴを刻み、ストリートでの機能性とデザイン的なアイデンティティを合わせて落とし込みました。
“ちょっとしたパーティやお呼ばれにも履いていきたいデザインになったけれど、一番にリクエストしたのはウエストの紐ベルト。僕はせっかちな江戸っ子なので『ぱっと出かけたいんだよ』と(笑)。スムーズであることは大事だし、そうやって生きてきた。フォーマルな感覚と楽に着られる利便性という、僕がアパレルに求める要素をglambが形にしてくれました。――金子ノブアキ”
GB0220/NK04 F.R. SANDALS
24,000yen + (tax)
ダイナミックなデザインとそれを形にするリュクスな仕上げ
ポジティブでアイロニカルなメッセージを大胆にあしらったサンダル、F.R. sandals〈エフアールサンダル〉。両足にまたがったロゴ使いはプリントではなくエンボス仕上げで表現。中綿でふっくらとボリュームを付けて表現することで、プリントとは一線を画すリュクスな質感を持たせています。ボディはサンダルタイプながらレザーシューズに用いられるコバ付きのソールを用いてドレッシーなニュアンスを演出。踵に当たるベルトはフックによって取り外しも可能となっています。インパクトのあるメッセージ性とデイリーユースを考えた細やかなデザインワークを兼ね揃えた東京ブランドならではの一足です。
“一生履いていたいと思えるサンダルが出来ました。音楽の時も撮影の時もあらゆる現場に僕は大体サンダルで行きます。glambのサンダルはスニーカーを履いているようなクッション性があって、展示会でも必ず注文してきた。既に完売になったモデルが欲しくてサンプルをもらったこともある。これまでのglambとの付き合いを振り返りながら形になった1足です。――金子ノブアキ”
GB0220/NK05 CROW YUKATA BAND
7,000yen + (tax) glamb Tokyo及びglamb Online Store限定展開
和装をより身近にするTOKYO仕様の浴衣帯
今夏リリースとなるシャツと同柄を用い、金子ノブアキの考える東京の姿を和装の中に提案するCrow yukata band〈クロウユカタバンド〉。浴衣の帯として仕立てられたこちらですが、本体に結び目を作った状態でお届けするボタン留め仕様。帯を結ぶのが苦手な方も和装を手軽にお楽しみいただけます。黒を基調とした生地は無数のカラスを描き込んだ総柄使い。その上に鳥居やネオンを思わせる赤のラインをあしらい、東京の夜景を投影した仕上がりとなっていま す。
“glambの浴衣帯はずっと前からこのボタン式で付けやすい。日本人にとっても帯をきれいに着付けるのは大変なことだし、浴衣を着るきっかけになったらとglambと帯を作りました。海外の方への贈り物にもいかがでしょうか。――金子ノブアキ”
GB0220/NK06 F.R. HAIR TIE
7,000yen + (tax) glamb Tokyo及びglamb Online Store限定展開
デイリーアクセサリーにメッセージを刻んで
ファーストシーズンから続くメッセージロゴをあしらったヘアゴム、F.R. hair tie〈エフアールヘアタイ〉。三本のゴムを束ねたこちらは結束部分にロゴを彫り込んだシルバーパーツをあしらいました。程良いボリューム感はゴムとしての使用はもちろん、バングルとしてもアクセントに。パンクでアイロニカル、それでいてポジティブなメッセージをデイリーに楽しめる一品です。
“髪が長いので手首にゴムをつけていることが多いです。同じようにゴムを持ち歩く人にとって、思い入れが感じられるゴムがあったら嬉しいのではとデザインを始めました。刻まれたメッセージは硬派ですけど、女の子にも試して欲しいと思いますね。――金子ノブアキ”
GB0220/NK07 F.R. MASK
Not for Sale
glamb と金子ノブアキによるコラボレーションラインの2シーズン目となる今季、撮影用に制作された非売の一品、F.R. mask〈エフアールマスク〉。昨今愛用者の多いポリウレタンタイプのマスクに大胆にプリントしたのは前季のコラボレーションでも支持を集めたメッセージロゴ。マスクをファッションとして提案する、コラボレーションならではの野心的な一枚となっています。
INTERVIEW
COLLABORATION BACK STORY
お互いに距離を取ることが、
逆に相手を思うことにもなる。
優しさとは何なのか、揺れ動く時代、
洋服作りの裏側にある思いを語る。
――昨シーズンから始まった金子ノブアキさんとのコラボレーションですが、前季の3型から今回は7型へと二倍以上のラインナップに増加しました。
「コミュニケーションがglamb と僕の間で取れていることがすべてかな。何度も会って話をして、ああだこうだ言って、今日も朝からああだこうだ言って。モノを作るのはそれでしかないですよね。それが型数という結果につながっているわけで。でも増えたからと言って薄まるわけではない。今日撮影で身に着けてみて、どれも本当に素晴らしい仕上がりだったと思う」
――今季はカラスの総柄の上に鳥居をイメージさせる赤いラインを引いたシャツや帯がキーアイテムとなりました。これらは二つとも東京をテーマに作っていったアイテムですね。
「東京の風土であったり、この街で生まれる情報の中に身を置いて僕も育ってきた。だから東京でずっと一緒にやってきたglamb と洋服を作る上で、東京の空気を乗せた服を作りたいと思ったんですよね。今季のアイデアを考えていたらある朝、ゴミ袋を食い荒らしているカラスの群れを見て。その時に東京を表すにはカラスがいいと思った」
――そこからカラスに守られた街というアイデアが固まっていきましたね。
「この東京という街はそういったものに守られてきたのかもしれないと思ってね。一見すると暗闇のような黒なんだけど、よく見るとカラスがいっぱいいるというのは、本当にいいよね。今日渋谷のビルの屋上に来て、カラスがそこらへんを鳴きながら飛んでいる中で撮影して改めて思ったけど、このロケーションはしっくり来た。今では渋谷も車で通るばかりになったけど、この辺の空気を思い出して考えたアイデアだったと思いますね」
――そしてもう一つ、コラボレーションを通して、前季に生まれた“FUCK RACISM”という言葉は引き続き軸となるメッセージになっています。今季はロゴをあしらったマスクもビジュアルに登場しました。
「2020年は海外の人が東京にやってくる五輪も予定されています。前シーズンのパーカーを作ったときは『東京へようこそ!』というおもてなしの気持ちを“FUCKRACISM”という言葉に込めた。ただ今のアジアの状況を見ると、コロナウイルスが発生してしまったり、オリンピックどころではない現状もある。元々は手を取りあっていこうというイメージで考え出した言葉だけど、物理的に手を取り合いづらくなってしまった今、お互いに距離を取ることが人を傷つけないことであったりする。優しさってなんだろうって問われている。人種以上に、自分の家族や友だちなど自分のローカルについて思いを馳せている人もいると思う。差別的なことをなくすにはまず安全じゃなくちゃいけない。そのためには誰しもが強がっていてはだめだし、責任をもってびびらないといけないと思う。東京オリンピックまで何があるかわからない。激動の時代ですよね。だから一緒にびびりながら解決してこうぜって思いがこの言葉に込められましたね」
COLLABORATION ITEMS - SPRING 2020
金子ノブアキとのコラボレーションライン始動
2020年の4シーズンを通し、glambと金子ノブアキのコラボレーション発表が決定。
記念すべきファーストシーズンとなる今季、3型のアイテムがローンチに。
GB0120/NK01 BLACK HOODIE
22,000yen + (tax)
金子ノブアキと生み出したメッセージフーディ
金子ノブアキとglambによるコラボレーションにより、両者の“ポジティブな反骨精神”を込めてリリースされるBlack hoodie《ブラックフーディ》。ビッグシルエットのボディに大胆に配されたロゴプリントは、2020年の日本と日本にやってくる方々へ歓迎の意を込めたもの。そのメッセージに呼応するようモノトーンのボディは真紅のサテン生地を総裏地使いし、「肌の色は違っても、その体には誰しも赤い血が流れている」という思いをデザインに込めました。さらに今回のコラボレーションを記念してあしらわれたのはフード裏にあしらわれた刺繍柄。glambのブランド史上第1作としてリリースされ、金子ノブアキとglambの出会いのきっかけとなったTシャツのモチーフへのセルフオマージュとなるデザインとなっております。デイリーユースに向けたディテールとして、本人からの要望で袖口にはサムホールをプラス。テキスタイルに30/10コーマ裏毛を使用したボディは、滑らかな裏地によるスムースな着用感も特徴。ヴィヴィッドなメッセージと気兼ねない着用感を兼ね揃え、本人のファッション観を映し出す1枚となりました。
「来たる2020年に向けて。これを着て世界のお客様を歓迎しましょう。そして裏地を見せて『皆赤い血が流れている』とリスペクトを伝えて下さい」(金子ノブアキ)
GB0120/NK02 RE LAY BIG CS
9,900yen + (tax)
Tシャツ on パーカーというストリートの新たなマナー
金子ノブアキとglambのコラボレーションにより、新たなレイヤードスタイルを提案する1枚としてリリースされるBlack big CS《ブラックビッグカットソー》。ネック裏に二つ釦を配した非常にワイドなビッグシルエットは、同時にリリースされるBlack hoodie《ブラックフーディ》の上に重ねるためにデザインされたもの。Tシャツとパーカーというストリートの不動のアイテムを斬新なスタイリングで楽しませます。胸元に配されたのは“relay”のメッセージは間に半角を入れることで様々なダブルミーニングをほのめかす造語。本人のイメージカラーであるブラックのボディに、ヴィヴィッドな赤であしらわれました。
「コラボレーションパーカーに合わせて、Tシャツonパーカーのスタイリングを作りたい!との提案から生まれたアイテム。glambチームの才能が光ります」(金子ノブアキ)
GB0120/NK03 RE LAY CS
7,700yen + (tax)
人の繋がりの美しさを眩いプリントに乗せて
2020年春、金子ノブアキとglambのコラボレーションによりリリースされるBlack CS《ブラックカットソー》。胸元にあしらわれたロゴは、単語“relay”の間に半角を入れた造語。「再び」を意味する“re”と、「信頼を置く」「霊を鎮める」などさまざまな意味を持つ“lay”という単語の語感を生かしたワーディングとなっています。プリントには蓄光インクを用いており、明かりを貯めると暗所で輝きを放つ仕様に。コラボレーションによるメッセージをその煌めきと共に伝えます。シルエットは本人の要望の下、ゆるさあるサイジングに。ボディカラーは本人のイメージカラーであるBlackに加え、同時にリリースされるBlack hoodie《ブラックフーディ》のインナー使いのために用意されたRedの2色展開となっています。
「リレーという言葉の英語表記が凄く綺麗だなと思った。glambらしい。『glambらしい』というイメージがあるのも、積み重ねられた凄みだなと思います」(金子ノブアキ)
INTERVIEW
KAN FURUYA + NOBUAKI KANEKO
その出会いから時を経ること15年以上、
互いに表現者として理解しあう
glamb設立者、古谷完と金子ノブアキ。
今季、フォトセッションを行った二人が対談。
*インタビューは2019年11月刊行のルックブックに掲載されたものとなります。
――2020年、glambの4回のコレクションで金子さんにモデルを務めていただくことになりました。登場を決めた理由はどんなものだったのでしょうか。
金子「人生のタイミングというか、時期的にというか、僕も残すものとしての仕事をしたいという思いがあった。墓標じゃないですけど、証拠を残していかなきゃいけないわけで。それをファッションでやると言ったら、付き合いが長いところとやらないと意味がないので、ここ以外では意味がない。glambとの出会いからは20年近いけれど、お互い感じてきた時間へのお祝いのような感じで出来たらと思っています。」
――知り合って15年以上のお二人ですが、改めて今再び撮影をしてみていかがでしたか?
金子「懐かしいけど、変わってないから、楽しかったな。さくさく進んだし。」
古谷「本当?よかった。」
金子「いい時って早いからね。スタジオは。『あっくん(注:金子ノブアキ)を撮るのは久しぶり』なんて完さん(注:古谷完)が言っても、面白いもので集まったらできちゃうから。懐かしさもあるけど、やっぱり体が覚えている。俺があまり被写体になったことがない時から、glambに撮ってもらってきたけど、撮影しながら色んな所に行って写真を撮った思い出がフラッシュバックするのも人生の美しさだなと思う。」
――さらに今回、1年間にわたるコラボレーションラインの展開も始動となりました。
金子「洋服をデザインするのははじめてだけど、自分がほしいものを何でも言ってみていいよって言われて、おもちゃ売り場に連れて行ってもらったみたいな気持ちだよね。生地の感じを見てみてくださいとか、素材を見せてもらうのも新鮮で楽しくて。何食べても一口目だし、この感覚は久々ですね。音楽でも演技でも自分に経験のあることだと、どうやって自分を焚きつけていくかみたいなことがテーマになっていく時もあるけど、ファッションに関しては全てが初めてだから。」
――仕上がりに関してはいかがですか。
金子「素晴らしいものが出来たと思ってる。売ってたら買っちゃうもん、3枚くらい (笑)。」
古谷「それはものを作る上で一番大切なことだと思う。自分で作ったものを自分で買いたいと思えるのは何にも代えがたいことだよね。」
金子「最初に打ち合わせした時からその感覚が凄くあった。自分で“もの”を作るテンションにしてもらえたから、これは本当に皆に感謝してる。glambとだと1つ聞いたら5個ぐらい返ってくるから『甘えてわがまま言ってもいいな』みたいな(笑)。相手によっては気を使ってしまう時もあるけど、ここに関しては親しき仲にも礼儀ありみたいなものが根底から吹っ飛んだね。自分の思いを本当のデザイナーになった気持ちで、『俺も遠慮しないでいきます』というところで作れた。」
――デザインを進行する中で改めてglambについて考える部分もありましたか?
金子「僕がいいなって思うglambのアイテムにはメッセージものが多い。“Never Never Never Quit”、絶対に絶対に絶対にやめないとか。GUITAR、BASS、DRUMSとか(笑)。良いんだよね、すげえ。服を着るという行為は武装だからさ、やっぱり。作る人の哲学に背中を押してもらって、俺も勝負に行くっていう。生きていくための、でも他者を傷つけることのない武装だと思う。僕はその恩恵を全身で感じながら、20代から今まで来たので。僕もその影響で未だにメッセージTを着ることが多いんだけど、この影響を本当に出しまくろうというのと、あとは今の僕とglambの感じをうまく混ぜれたら最高かなって。」
――glambのメッセージで共感されたのはどのような部分だったのでしょうか。
金子「やっぱりね、glambにはずっと反骨精神がある。昔から完さんもスタンスはソフトだけど『かかって来いよ』っていう尖った空気があった。『お酒もあるので、皆さん展示会へ来てくださいね』って肩肘張らずにやってるんだけど、それが意味することって『文句あるなら来いよ』という風に俺は見えていた。
古谷「スタート切っちゃったら必ず敵は出てくる。上り調子になるほど、常に何かしら出てくるんですよ。でも自分がやっていることって、別に悪いことをやっているわけでもないし、自分が信じてるものをただやっているだけで。それを面白く思わない人が出てきたとしても、誰かを傷つけるわけでもないし。自分のことを信じてやれば、仲間もどんどんできてくるし、それはずっと20年、何をやっても感じているよね。」
金子「あの当時、裏原にもバンド周りにも硬派なやつが多かったけど、glambの感じはスムーズで、それはすごく参考になった。俺も結構短気で現場に行くと怒れる男なんだけど、そんな時はglambの服を着て、その感じを思い出してっていう。『大丈夫、俺は一人じゃない』って思いながら。」
――パーカーには反骨精神とポジティブさの二面性を持ったメッセージが刻まれていますね。
金子「2020年はメモリアルイヤーで世界中からたくさんの人が東京にやってくる。だからここに暮らしてきた自分たちがどうやって発信して、どうやって証拠を残していくかということを考えて。最終的には世界平和みたいなことglambの感じで歌っていきたいと思った。文言は何周も何周もしたんだけど、本当に土壇場の夜に『これだ!』とひらめいたんだ。自分がもし海外に行って大きな催しがあるときに『人種差別反対』という服を何気なく着ている人がいたら『イェー!』ってなっちゃうって。来年以降、みんながこれを着て歩いてたらさ、普通におもしろいことが起こる可能性もあるじゃん。これを着ている人が海外の人と会ったら悪い奴と思われないし、そこから何かが生まれるかもしれない。世界で一番これを言っていい都市だから、東京は。」
古谷「メッセージTってその人のアイデンティティで、看板みたいなものだと思うんです。あっくんが一つのプリントにはどれだけの信念や意志が込められているものか語ってくれたけど、僕らのやってきたことがあっくんのフィルターを通して今回のコラボレーションアイテムに込められていて、嬉しいよね。」
金子「責任が生じているわけじゃん、半分は。楽しいですよね。みんなの手を借りて、一緒に洋服を作るという方法で、自分たちの意義や活動理念みたいなものを目に見えるものにできるのは。」
古谷「そう言ってもらえると、僕らも逆にブランドとしてもっと考えないといけないと思えるからさ、いつもありがたいよ。」
金子「でも俺、今回3型だけでもとんでもない思いだったのに、glambは年4回のコレクションをこれだけの型数でやってるのかと思うと、すごいよね。昔、年2回だったコレクションを年4回にするって聞いた時も『絶対途中で回数減らすぞ〜(笑)』って言ったけど。」
古谷「最初に4回にする話をした時に言っていたね(笑)。」
金子「今もそれを続けているっていうのは、とんでもないことだよね。あんまり外から偉そうに言うことでもないのかもしれないけど、僕はglambの整理番号1番くらいのユーザーかもしれないし、声を大にして言わせてもらう。こいつらすごい。好きで好きでしかたないのが根底に見える。揺れてしんどい時もあるんだろうけど、『これを絶対やめたくないんだ。血反吐吐いても絶対やるんだ』っていうのが。それがあるから、アパレルや音楽に限らず全部のジャンルの人にも言いたいですね。『ちょっとglambの感じを見てみたら?展示会に行ったらわかる、狂った連中だから』って。」
INTERVIEW
KAN FURUYA + NOBUAKI KANEKO
Part 2
当初の予定時間の2倍以上で語られた
古谷×金子ノブアキによる対談。
ルックブックに掲載できなかったパートをWEB限定公開。
出会いや歳を重ねることについて二人が語る。
――二人の出会いを今、振り返るとどのようなものだったのでしょうか
金子「ブランドができたての時に、友だちに連れていってもらって。まだglambの事務所はデスク一個だけだったよね。」
古谷「最初は僕が住んでいた家の半分を事務所にしてたんで。20年くらい前だよね。」
金子「中目黒の川沿いのアパート、2階か3階か。」
古谷「まだブランドをはじめるか、はじめないかのころだね。」
金子「最初はTシャツ一枚、それだけしかなくて。」
――古谷さんも当時のことを覚えていますか
古谷「よく覚えてる。あの事務所にあの段階で来てる人なんてあんまりいないので。僕が28歳くらいで、あっくんはアメリカに行って帰ってきたばかり」
金子「そう。その頃帰ってきて、やることなくて。楽しい時期だったね。若いけど、金ない、暇はある(笑)。その時に何があるか、人生で一番大事な時間の1つだった。glambとの関係は、その最たる例だったかもしれない。」
古谷「初めて会った時に渡したTシャツをあっくんはずっと着てくれてるね。」
金子「あるよ、今も家に。」
古谷「キリストモチーフなんだけど、今のあっくんにちょっと似てるんだよね。でもやっぱり、何なんだろうな。ご縁というのも変な言い方だけど、始めるタイミングで会えて、お互い自分たちがやってることをずっとできているのは嬉しいことですよね。」
金子「glambの中でプロジェクトやチームがどんどん大きくなったりするのを俺もずっと見てきた。完さんには最初から狙いがあって、それが上手くいくのが本当にすごいなと思って。俺らも歳も取っていくわけで、若い力もどんどん入ってきて、新しくなっていったよね。ファッションブランドで代替わりをするのは至難の技だと聞いているけど、glambはもう2周目が成熟している時期じゃないですか。前に二人で対談を行った時は(注:2013年11月)、ちょうど一回り前くらいで『ここからだんだん変わっていく』って話をしたんだけど、今はそこから成熟して。人が変わりながら続いていくのは、やっぱり普通じゃない。すごい。
――金子さんから“歳を取った”という発言もありましたが、歳を重ねるのは二人にとって楽しいことですか?
金子「めちゃくちゃいいね。40代直前になった今、“不惑”という言葉はすごいと思う。本当になんかね、どうでもよくなるんだよ、いろんなことが。格好つける必要もないし、背伸びする必要もない。自分が若くないから、美しくある必要がないっていうか。全然愚かでいい。」
古谷「僕が『格好なんて』というのもなんだけど、そうじゃないものが歳を取ると真ん中に出てきますよね。」
金子「そう。時間が過ぎるのがすごく速くなるから、一抹の寂しさもある。けど、それがまた刹那的で、良さも感じる。日々の天気が良いというだけですごく大事な一日だと思ったりするわけだよね。」
古谷「そう考えるとお互い良い歳のとり方ができたのかもしれないという気はするよね。」
金子「ああしてれば良かったと思うこと、細くはいっぱいあるけど、大枠で考えるとありがたいことに全然ない。『これで良かったんだよ、俺は』と。」
――二人とも格好よさが20代、30代において大事な価値観だったと思う。今、何が二人の芯になっているのでしょうか。
金子「今回、glambとコラボレーションさせてもらうことになって、改めて今の自分の思想というか、どこに向かっていくのかも考えさせられた。今回glambと作ったコラボレーションアイテムはまるで幼児帰りでもしているような感覚で向き合う事が出来たけれど、こういうことなのかもしれないって。ここから先はこのままで突っ走っていける可能性があるなと感じるから。だから哲学的にも物持ちのいいものを、と思ったね。ジジイになるにしたがって尖っていく人も多いしさ。その気持ちもわかるよね。『これでいい、ドーンと行こうよ』ってところにいけるんだと思って。」
古谷「僕らの仕事も商売になるから、本当は他者の目というのを意識しなきゃといけないんだろうけど、見栄とかじゃなくて、そんなこともどうでもよくなってくる。自分たちのやっていることが絶対にこの道なんだっていうのが感じられるというか。『よそは関係ないや』というのが、より感じられるというか。『よそは関係ない、というくらいになりたい』っていうのが昔だったかもしれない。今はそんなことすら意識しないで『よそは関係ない』と感じられるというのがあるかな。」
金子「全能の若さも羨ましいけど、今の感じは諦めとは違う。死ぬのも怖いし、若者が羨ましいけど、『でもいいな、今の感じ』って。昔から先輩がそう言うのを聞いてきたけど、自分がこの歳になってみないとその感覚はわからなかったね。」
古谷「昔、若い時は『40代もいいわよ』とか『人生40歳からだよ』とか言われた時に――」
金子「40なんて引退じゃん、下り坂でやばいでしょみたいな(笑)。」
古谷「そう(笑)。若い時は負け惜しみじゃないかとも思ったけど、そんなことなかったなって。まあ、でもね、若い人がこれを読んだら負け惜しみかって思うかもしれないけど(笑)。」
金子「中身は全く変わってないから。『根本は変わってないんだな、みんな』と思う。 周りの先輩たちのことを考えて、当時40代だったあの人たちも若い時から変わってなかったんだって。」
古谷「そうね。だから若い人にも相手が年上でも気後れしないでどんどん話しかけてほしいよね。」
金子「大人になるという概念なんてない。年齢だけ。体はどんどん細胞が分裂しなくなって弱っていくだろうけど、それはそれでなんかイメージすると楽しみも多くて。楽器がやれなくなったらどうしようと思っても、打ち込んでMPCでやればいい。最近、俺は自分の20代からの膨大なテープを集めていて、ジジイになってもこれでやれるようにとかイメージしてる。もし長生きできちゃったらさ、かっこいいおじいちゃんってかっこいいから。老後がリアルに想像つくんだよね。そうすると楽しみを見出すようになる。それが諦めじゃないっていうことなんだと思う。謎のワクワク感みたいな。」
古谷「諦めはないね。」
金子「最初は二人とも20代でイケイケだったけど、20年近くお互い見てきて、まあ、人生の機微みたいなものもあるしね。本当に一緒に生きてきたし、あらゆるご縁を含めて、完さんもglambも俺の人生に深すぎるくらい入っているから。これからも、病気の話をして、子供の話をして、あと人間ドックの話(笑)。 本当に、歳取ると健康の話をするようになるんだね。俺は人間ドックもglambの紹介で行きましたから(笑)。」
古谷「病気なんか考えなかったね。」
金子「考えない。俺は実家が葬儀屋なんで、最後は何でもするんで言ってくださいね。代わりに俺は墓石のデザインしてもらう。それが最後の目標みたいなところではある。面白いよね。」