Spring Collection 2024 “Holy Punks”
僕がデザイナーになろうと思い始めたのは、15歳の時だ。当時、僕は“ラッキージャケット”と名付けたテーラードジャケットをよく着ていた。ピークドラペルにナポレオンテープ、ミントグリーンの裏地に金属のひとつボタンスタイル。古着屋で買ったのだが、タグもついていなくどこの国で作られたのかも分からない。けれど、僕の心はそのジャケットに強く惹きつけられていた。ジャケットには高級感があって、けれどパンクなムードが漂っていた。ラッキージャケットと名付けた理由。それは単純で、このジャケットを着ていたら何か良いことが起こる気がしたからだ。
「glambの洋服は自分を強くしてくれる。glambの哲学に背中を押してもらって、俺も勝負に行く」。この言葉を聞いたのは、十代の頃から二十年もの時が経ってからのこと。僕はglambのデザイナーになり、ブランドと馴染み深いミュージシャンから不意にこの言葉をもらったのだった。
コンサートをしなくても、人にはそれぞれ舞台がある。僕らは誰もが主役で、スポットライトが当たるタイミングが必ずある。そんな時を華やかに彩り、それぞれのアイデンティティを際立せる、魔法のマントのような洋服を作りたかった。十代の僕にとっての“ラッキージャケット”がそうであったように。
“ラッキージャケット”のイメージを膨らませるうちに、今季のコレクションテーマとなる“Holy Punks”という人物像が固まっていった。パンクとは音楽やファッションのカテゴリに収まらず、主張を持つというそれ自体のことだと僕は考えている。そして、この世界において主張を貫いて生き抜くことこそが優雅だと僕は感じている。
今季、70年代以降のパンクファッションを紐解きながら、コレクションを組み立てるのは非常に刺激的な時間だった。多くのパンクスが残したアイテムを自分の中に取り込み、今を生きる僕らの想いを乗せて新たに描き直す。自分の中にある棘を隠さず、すべて表に出す。主張があるということは優雅なことなのだ。
コレクションの完成にあたり、ご本人の生き様というフィルターを通してコレクションの世界観を表現してくれた10-FEETのTAKUMAさんには心から感謝しています。さて、あなたにとっての“ラッキージャケット”を見つかるでしょうか。もし見つかったら、ぜひ僕に教えてください。
glamb Head Designer, TK
- ModelZen
- Felix
- Mathew
- PhotograghyYuko Takakai
- Hair&MakeShota Nishiyama
- StylingTK
- Akihiro Takaiwa