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職人がその人生を捧げて集めた
ミシンの名機の数々とともに
ブランドのデニム縫製を担うのは、瀬戸内海の傍らにある小さな縫製工場。従業員は3名、工場というよりはアトリエと呼んだ方がしっくりくるかもしれません。この仕事場でミシンを走らせるのが御年77歳、半世紀近くにわたってデニム作りに携わる内山清氏です。
glamb のデニムの表情の鍵は、内山氏が長年に渡って集めた数々のミシンと、それを操る内山氏の縫製技術にあります。
上部で内山氏が操る大型ミシンは縫製業界では一般的な機体ですが、内山氏はそれを原型を残さないまでカスタム。剥き出しの金属部品で構成された針回りは、知人の鉄鋼業者に依頼して組み上げたもの。自らの身体の一部として駆動するよう極限までチューンされた一台がスピードと正確性を生み出すのです。
さらに内山氏はヴィンテージミシンの名機であるユニオンスペシャルも保有。20世紀中期にアメリカで生産され、1 台150万円以上と当時の5倍の高値で取引されるミシンです。
高騰する価格とは裏腹に、ユニオンで縫えるのは裾のチェーンステッチのみ。用途が限られたユニオンがなぜこれほどまでに求められるのか。それは、ヴィンテージ期のデニムに見られる特徴的な裾の色落ち、パッカリングが現れるためにはユニオンが不可欠だからです。
このミシンの最大の特徴はヘッドから斜めに飛び出た針。硬いデニム生地を縫う際、現在のミシンは生地に対して直角に針を落として縫うことができますが、20世紀中期にそれだけの馬力を持ったミシンが存在しませんでした。そこで用いられていたのが機構に負荷をかけずに硬い生地を縫い上げることのできる斜め針のユニオンでした。
このミシンで裾を仕上げると、直角針では生じない「うねり」が縫い目に刻まれます。このうねりの凸面が長年の着用で削られ、斜線状のパッカリングが現れるのです。
内山氏が縫い上げたデニムがその後、どのように仕上げられていくか、今度は加工を担う工場へ向かいます。